フォークフェスティバルinひだか

コンサート日記1

フォークフェスティバルinひだか

音楽とは不思議なものだ。その曲を聞いた瞬間に世の中がパッと一変する力がある。学生の頃良く聞いていた曲が、ある日突然、街頭で流れていたことがあった。クライアントの約束で急いでいたにもかかわらず、当時の仲間たちの横顔や周りの風景、風の匂いまでが一気によみがえってきた。そしてあぁこんな時代があったなぁと一瞬だけ感傷に浸る。

人は皆たぶん大切な曲を持っているのだろう。それは楽しかったこととシンクロしているだけではない。辛かった当時や悲しかった出来事までも美しいひとコマに変え、不意にタイムスリップしてくるのだ。かけがいのない思い出を素敵によみがえらせるコンサート。実現できたら素晴らしいな。ふとそんなことを思った。

2012年12月、ついにその思いは実現した。例年より少し早く雪が降り始めた北海道、ひだか。

地元スタッフと共に新しい試みを共有しながら、事前に募集した町民への「思い出の一曲と、そのエピソード」に目を通す。集まったリクエストカードは予想以上に胸を打つ内容だった。実感できた。やはり人は皆、心に歌を持っている。その思い出は何物にも変えがたい貴重な心の故郷といえるものなのだ。

出演は元ふきのとうの細坪基佳、五十嵐浩晃、堀江淳、そして双子のフォークデュオVoice。思い出を歌うには打ってつけのメンバー達。進行役には工藤じゅんき。若者にとってバイブル的存在の深夜放送「アタックヤング」の人気DJでもあった。だからコンサートはラジオの深夜放送のようなイメージにしたかった。流行の歌をかけ、曲の合間には兄貴のようなDJが、ちょっとぶっきらぼうに、でも寄り添うように語り掛けるスタイルで。

そして本番。トップバッターはVoice。
1993年、ちょうど20年前のヒット曲『24時間の神話』からスタートした。センチメンタルでドラマティックなラブソングは時を越えて胸をキュンとさせる。「テレビの主題歌で聴いていた。是非生の声で聴いてみたい。何年経っても新鮮に感じる曲です。」との思いが寄せられた。

続く堀江淳は名曲『メモリーグラス』をはじめ、町民リクエストの『見上げてごらん夜の星を』やクリスマスソングを透き通るような声で歌い上げた。五十嵐浩晃は、「当時、2歳上の姉が大好きで1日中聴いていました。私も知らず知らず聴いていた曲」とのメッセージで『愛は風まかせ』を。そして地元中学生から寄せられた『最後の雨』を歌う。さらに自身のヒット曲『ディープ・パープル』では、今まで見せたことのない‘マイク無しでの熱唱’を披露した。

トリをつとめたのは細坪基佳。「昔、車の中で家族一緒に良く聴いていた。今では子供たちもカラオケのレパートリーになっている」という女性は『風来坊』をリクエスト。「30代半ばの頃、ひとまわり年上の彼と知り合い、恋に落ちて車の中で一緒に聴くうちにすっかりこの曲が好きになりました。今はお互いに別々の人と結婚して幸せに暮らしています」と『やさしさとして想い出として』にまつわる想い出を語った声も寄せられた。またこの日は細坪にとって印象深いエピソードがあった。開演前、今回の主催者と挨拶を交わした。そこで二人は同じ年齢・同じ大学の出身であることを知り、驚きのご対面となったのだ。さらに司会の工藤じゅんきも同い年。北海道で生まれ育ち、山あり谷ありのそれぞれの道を経て今の自分達がいる。三人は今までの人生を少しだけ振り返りながら、出会いの喜びや仲間の素晴らしさをあらためてかみしめていたに違いない。事実、細坪はこの日のセットリストを一部変更し、オリジナル曲『同胞(ハラカラ)』を急遽歌ったのだった。

町民に‘思い出が素敵によみがえるひとときを届けたい’というコンサートの主旨は、ある出会いをきっかけに、出演者自身にも同じ思いを抱かせ、会場がひとつの同胞=同じ地に生まれた仲間’として包み込まれていったのだ。一人ひとりの大切な思い出が会場全体へ共鳴し、明日につながる新しいエネルギーへと変換していった瞬間だった。

このコンサート自体が、町民一人ひとりの心にいつまでも息づく、大切な思い出となってくれることを願わずにはいられない。

『フォークフェスティバルinひだか』2012.12/8(土) 道内出身の4組のアーティストが、町民のリクエストに応えた2時間半のステージ。520名。満員御礼。
*文章内に出てくるアーティスト名は敬称略させていただきました。

『フォークフェスティバルinひだか』のポイント

ポイント1
全国で活躍中の道内出身アーティストが一同に集結! 全国各地それぞれの活動場所から、北海道・ひだかに4アーティスト総勢6名が集まり ‘リクエストに応える’という画期的なオリジナルコンサートが実現しました。

ポイント2
ラジオパーソナリティの工藤じゅんき氏が特別参戦! このたびのコンサートの趣旨にご賛同いただき、出演に快諾されました。 工藤氏の司会進行により、DJスタイルでのリクエストコンサートが実現できました。

ポイント3
町民と地元企画スタッフ、出演者が一体となった取り組み! 町民のリクエスト、それらを運営する町民スタッフ、そしてそれらに応える出演者。 ひとつになれたことで実現できた貴重なメモリアルコンサートとなりました。